MESSAGE FROM THE DIRECTOR

グローバルヘルス政策研究センター
センター長 渋谷健司

グローバルヘルスは保健医療の未来。

政治的混乱、世界規模の人口移動、人道的危機、気候変動、および絶え間なく拡大し続ける経済統合の真っただ中にある今日、グローバルヘルスはまさに人間の安全保障に関わる最も重要な課題の一つであります。グローバルヘルス政策を語らずして、将来の平和で持続可能な世界の発展・展望は望めないといっても過言ではありません。

将来のグローバルヘルスにとって極めて重要な岐路にあって、わが国の政府がグローバルヘルス政策研究に資するシンクタンクであるiGHPを創設したことは単なる偶然ではありません。

グローバルヘルスとは先進国から開発途上国への技術や資源の移転でもなく、援助国からの基本的なサービス提供でもありません。それは常に保健医療問題に対する包括的なアプローチを必要とし、また学際的な交流を通しての相互的学びや、革新的な研究活動を促進するものです。

一方、日本における保健医療も大きく変容しつつあります。私が座長を務めた20年後の保健医療のビジョンを検討する「保健医療2035」策定懇談会がその一例です。そこではシステム・アプローチを重要視し、「価値のある保健医療サービス」、「社会的健康の決定要因を含むライフ・デザイン」、そして「グローバルヘルスにおけるリーダシップ」という3つの新たなビジョンを打ち出しました。

日本はこれまでも、そして、これからもグローバルヘルス政策提言において主導的役割を担って参ります。しかしながら、わが国の取り組みを持続していくためには、官民共働でグローバルヘルス分野での研究能力の大幅な拡大をしていくことが不可欠です。

国立国際医療研究センター(NCGM)は臨床医学にとどまらず、基礎・最先端医療研究機関としての役割も果たしております。しかし、NCGMがわが国を代表するグローバルヘルス分野の中心に立つためには、グローバルヘルス政策においても先導的な役割を担わなければなりません。グローバルヘルスの実践に関して日本人が学んだ教訓や、専門知識の効率的な伝承を妨げているのは、確固とした国内外を含めたグローバルな科学的評価の不充分さに起因しております。

iGHPのミッションは、この状況を改善し、主としてグローバルヘルス政策に資する日本の代表的なシンクタンクとして活動していくことです。私たちは国内外を問わず、官民学のあらゆる部門が世界中の研究機関と連携してグローバルヘルスの発展のために貢献して参ります。

関係者が力を合わせ共に成果を挙げていくことによって、この不透明な時代のまっただ中にあるグローバルヘルス政策に大きな変革をもたらすことが出来ると確信しております。

グローバルヘルス政策研究センター センター長
渋谷健司

1991年
東京大学 医学部 卒業
1993年
帝京大学 市原病院 研修医(麻酔科)
1993年
帝京大学 医学部附属病院 医師(産婦人科)
1993年
米国ハーバード大学 リサーチ・フェロー
1999年
米国ハーバード大学より公衆衛生学博士号取得
1999年
帝京大学 医学部 産婦人科 助手
2000年
帝京大学 医学部 衛生学公衆衛生学 講師
2001年
世界保健機関(WHO)シニア・サイエンティスト
(保健政策のエビデンスのための世界プログラム)
2004年
WHOコーディネーター(評価・保健情報システム/保健統計・エビデンス)
2008年
東京大学 医学系研究科 国際保健学専攻 国際保健政策学教室 教授
2012年
(社)JIGH代表 理事

グローバルヘルス政策研究センター センター長

渋谷 健司KENJI SHIBUYA

略歴

1991年
東京大学 医学部 卒業
1993年
帝京大学 市原病院 研修医(麻酔科)
1993年
帝京大学 医学部附属病院 医師(産婦人科)
1993年
米国ハーバード大学 リサーチ・フェロー
1999年
米国ハーバード大学より公衆衛生学博士号取得
1999年
帝京大学 医学部 産婦人科 助手
2000年
帝京大学 医学部 衛生学公衆衛生学 講師
2001年
世界保健機関(WHO)シニア・サイエンティスト
(保健政策のエビデンスのための世界プログラム)
2004年
WHOコーディネーター(評価・保健情報システム/保健統計・エビデンス)
2008年
東京大学 医学系研究科 国際保健学専攻 国際保健政策学教室 教授
2012年
(社)JIGH代表 理事

国際保健政策、経済学、人口学、統計学、疫学
死亡・死因分析、疾病の負担分析、リスクファクター分析、費用効果分析、保健システムパフォーマンス分析、保健外交など。現在、Global Burden of Disease 2010研究コアメンバー、GBD科学評議会、WHO保健統計専門家委員やランセット特別号の組織委員を務める。

業績・研究概要

1993年よりハーバード大学とWHOと世界銀行によるGlobal Burden of Disease(GBD)プロジェクトに参加し、疫学、統計学、人口学と経済学的アプローチを駆使し、保健アウトカムおよび保健制度分析を継続して行っている(共同研究者:Christopher Murray, Alan Lopez)。2001年から2008年まではWHO保健統計部門のチーフとして活動し、世界の保健政策分析や提言を行い、多数の国際共同研究案件にWHO側の代表として携わった。2008年11月には「G8北海道洞爺湖サミット・フォローアップ」にて中心的役割を果たした。主な国際機関幹部を始め、国内外より計150名の国際保健分野の研究者・実務家が参加した。この研究会の中心的役割を果たし、国内研究者、民間セクター、学会、財務省、厚労省、外務省、文科省、政治家、医師会、市民社会代表などあらゆる関係者を巻き込み、統率力を発揮する機会を得ることができた。2009年からは、ランセット誌・日本特集号のための研究プロジェクト(2009-2011年)の研究代表者を務め、国内外の主な保健政策研究者ら70名とともに6編の論文を作成する研究の統括を行い、2011年9月に発刊し、大きな成果を上げることができた。2008年からGlobal Burden of Disease(GBD)2005プロジェクト(2008-2011年)の7名の中心チームのメンバーとして、世界各国の100名以上の連携研究者が参加するプロジェクト全体を統括しており、その成果は2012年12月にランセット誌に8本の論文として発表された。2014年にはG7伊勢志摩サミット(2016年)に向けてエビデンスに基づく国際保健政策提言を取りまとめるトラック2としての官民学連携の研究グループ「グローバルヘルス・ワーキンググループ」の総括を務め、専門分野の垣根を越えた人材を国内外から招集し、グローバルヘルスに関する首脳会談の指針を作成した。その成果もランセット誌に発表されている。2015年、我が国の20年先を見据えた保健医療政策のビジョンを策定する厚生労働省の諮問委員会「保健医療2035策定懇談会」の座長を務め、国民の健康増進、保健医療システムの持続可能性の確保、そして保健医療分野における国際的な貢献などの分野における戦略的な取組に関する提言を発表し、その成果もランセット誌に掲載されている。